武蔵野五輪弾圧救援会

2021年7月16日に東京都武蔵野市で行なわれた五輪組織委員会主催の「聖火」セレモニーに抗議した黒岩さんが、『威力業務妨害』で不当逮捕・起訴され、139日も勾留された。私たちは、無罪判決をめざして活動している。カンパ送先⇒郵便振替00150-8-66752(口座名:三多摩労働者法律センター)、 通信欄に「7・16救援カンパ」と明記

被害実態なき懲役1年とは?――五輪反対を鮮やかに表現した爆竹

リレー随想★1

                  なとり           

秩父夜祭での興ざめな警備

 先日3年ぶりに開催された秩父の夜祭に行ってきた。ユネスコ無形文化財にも登録された山車の曳き廻しやそれに合わせての花火などまさに見物で、1日で26万人もの人が訪れたという。ただ曳き廻しが始まる数時間前から会場のいたるところで警察官が打ち合わせしている姿がやけに目に付き、付近には何台もの機動隊の車両も配備されていた。
 そしていざ山車が出発するという時間になると、山車の行く先には警官が設置した可動式の厳重な柵が置かれ、山車と観客の間にはプラスチックの柵と多数の警官が立ちふさがっていた。また一人の警官がスピーカーで間断なく観客に様々な注意を呼びかけていて(いわゆるDJポリス)、静かに始まる祭りの雰囲気が妨害されているように感じた。山車が出発するとともに柵は取り払われたのだが、山車が通る場所では警官によるスピーカーでの注意喚起はずっと続き、一緒に観ていた人は「少し興覚めですね」と言っていた。

 あと不思議に感じたのが、警官以外に観客への対応をしている「祭り側」の人が見当たらないことだった。地域の祭りならば、地元の人が客への対応をある程度は担うものだろう。

 調べたら戦後数年での開催時に祭り終了後駅へ流れた客が6人圧死した事件があり、それから警備が厳重になったと書いてあった。が、もう何十年前の話だ。街の中のある商店に張り出された写真(カラーで明瞭だったからそう昔ではないはず)にあったのは、山車の周りに誰が観客なのか分からないほどに人が入り乱れた以前の祭りの光景だったが、それはすでに別の祭りに見えた。


■オリンピック・パラリンピックでの攻防とは
 翻って一昨年コロナ禍で多くの人々の反対にも関わらず開催されたはオリンピック・パラリンピックは、言うまでもなく国家挙げての「お祭り」だ。警備やコロナ対応と称し全国から警察官や自衛官が集結し、祭りの開催中は各会場でボランティアスタッフと連携しながら大手を振って主役級に動き回っていた。

 コロナで無観客ということで、警官の役割は抗議者への対応にある程度限定されたかもしれない。観客らしい観客しかいないお祭りの警備は、むしろそれこそが本来の役割といえたのではないか。権威への奉仕のためだけの「祭り」において、攻防はそれに異議を唱える者たちとの間にしか生じないからそこが最前線となる。抗議行動の現場では、持ち運び可能な柵でその線を決める実権を持っているのが警察で、抗議する側は、その柵と立ちはだかる警官の身体とのぶつかり合いによってその柵を意識せざるを得なくなる。パラリンピックの開会式での抗議者の逮捕はその後数日で釈放されたとはいえ、その線を超えようとしたことに対する見せしめであるとともに、線の実効化が権力の狙いであろう。

 

■爆竹抗議に、解放感を感じた
 黒岩氏の爆竹抗議を見聞きした人の中からは「解放感があった」という声が聞かれた。なぜだろうか。それは爆竹の破裂音が権力が引いた線そのものを無効化したからだろう。また即座にその柵を乗り越えようとする身振りによっても突破を示した。そもそもイベント会場は、普段は開かれた公共空間であってその柵は五輪イベントのために置かれた柵であった。その音が響いた時間は「聖火」イベントによって奪われた空間を私たちの側に取り戻したと感じさせた瞬間でもあったのではないだろうか。
 一審公判の中で「被害者」を買って出たイベント会社の社員は、事前の打ち合わせにおいて会場外で行われる抗議行動については黙認するという確認を警察とともにしていたと証言した。ということはその線を超えてきたら警察とともに阻止するという方針だったということだ。そしてその社員も警察もその通りに行動し、即座に当該を取り押さえ、逮捕した。その後のことはお上にお任せということだが、残ったのは「誰もけが人はいなかった」し、「業務はほぼ滞りがなかった」という社員が裁判で証言した事実のみだった。
 お上は黒岩氏を139日勾留し、懲役1年の判決を下した。これだけの罪を着せようということは、裏を返せば、黒岩氏の行為がまさに「表現」としての威力を持っていたいう証明でもある。反対の声を圧殺して開かれようとしていた「祭り」に向けて投げられた爆竹の音はその時明確な鮮やかさを伴った抗議の表現となったのだ。
 被害のない案件において罪を創作しようとまでする、司法として本当に無様としかいいようのない一審判決の内容だった。まさに司法ぐるみの「五輪開催に対する政治的表現」への弾圧であり、その実態を明らかにするということにおいても意義ある裁判に関われていると私は思っている。爆竹無罪。

2021.7.16オリンピック「聖火」キス会場の武蔵野総合体育館前 制服警察官の前や階段にいる白シャツ・バッグ斜めがけの連中は公安警察

12/7、最高裁と東京地裁で、セクハラ退廷に抗議した

 12/7、東京地方裁判所最高裁判所に、男性の裁判所職員が女性の体に触るのをやめるよう、要望書を提出しました。法の番人によるセクハラ命令、ほんと、やめてよ!

最高裁判所に要望書を提出

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                        2022年12月7日

最高裁判所御中
東京高等裁判所御中
東京地方裁判所御中

                  武蔵野五輪弾圧救援会
                  東京都国分寺市南町2−6−7丸山会館2階5号
                  (三多摩労働者法律センター気付)

             抗議・要請文

 私たちは、東京地方裁判所立川支部の「令和」3年(わ)第1016号事件の被告黒岩大助さんを支援する団体です。裁判は、2021年7月16日に武蔵野陸上競技場で行われた調布・三鷹武蔵野市東京五輪「聖火」セレモニーの終了直後に五輪・「聖火」に爆竹で抗議して逮捕され威力業務妨害罪で起訴された黒岩さんが、無罪を争っています。
 去る9月5日、東京地方裁判所立川支部101号法廷(竹下雄裁判長)で、判決公判が行われました。傍聴者は70人、裁判所に入る前に体についている金属製品と荷物をチェックされ、さらに法廷に入る前に荷物を預けさせられた上に金属探知機で体をチェックされました。法廷には6人の男性廷吏(法廷警備員)がいました。
 判決は、懲役1年、未決算入50日、執行猶予3年。懲役1年の重い刑に法廷内は騒然とし、竹下裁判官は、被告・傍聴者を次々と退廷にしました。廷吏の判断で退廷になった人もいました。
 11人の退廷者の中に、二人の女性傍聴者も含まれていました。二人の女性は「男性は体を触らないで」「セクシャルハラスメントはやめて」と訴えましたが、裁判官らも廷吏も躊躇なく、体を触わり男性廷吏4人が担ぎ上げて退廷にしました。二人のうち一人に対しては、足を担ぎ上げる際に男性廷吏一人が女性の足を固定して持ち上げるために女性の足と足の間に片足を割り入れたために女性の股間に男性の足が触れる事態になり、女性はかなりのショックを受けました。また、もう一人の女性は担がれておろされる際にいきなり廊下に落とされ、頭を強く打ちました。
 私たちは、今年5月18日にも、東京地方裁判所立川支部あてに、4月20日の同裁判第五回公判中に男性廷吏が「触らないで」と訴える女性傍聴者を無視し男性廷吏4人が女性の体を触りながら退廷したことに対して抗議・要請書を提出しています。私たちは、抗議と共に、①Aさんにセクシャルハラスメントをしたことを謝罪する②裁判官は異性の体に接触することを裁判所職員に対して命じない③裁判所職員は異性の体に接触しない――の3点を6月17日までに回答するよう求めました。
 しかし、期日までに回答がなかったため、7月3日に東京地裁立川支部に回答を求めに行ったところ、「答えないと決めた」と伝えられるだけでした。法執行機関による性差別を是正するよう要望したのに、回答を自ら伝えもせず、謝るわけでも検討する方向であることを伝えもしない、不誠実な態度に呆れています。請願法第五条には、「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない」とあります。しかし、法曹界にはいない一市民の訴えは、裁判所にとって聞くに値しない、ということなのでしょうか。
 そして、竹下雄裁判長は、4月20日と同じセクシャルハラスメント退廷を反省することなく、9月5日に再び、セクシャルハラスメント退廷を裁判所職員に命じたのです。
 私たちは、再度、訴えます。法の番人たる裁判官らが、人権への配慮を怠り、公権力を行使して、「触らないで。セクシャルハラスメントはやめて」との女性の訴えをきかずに堂々と男性裁判所職員が女性傍聴者の体を触ったことに強く抗議します。被害者への謝罪と、すべての人が性・身体・人種・信条などを理由にすべての裁判所内で差別されないようにすることを求めます。
 5月18日の抗議・要請書を添付したうえで、再度、申し入れます。誠実な対応を求めます。2023年2月6日までに上記宛先まで、ご回答ください。

1、2022年5月18日と9月5日の東京地方裁判所立川支部101号法廷(竹下雄裁判長)での「令和」3年(わ)第1016号公判で竹下雄裁判長の指揮で行われたセクシャルハラスメント退廷の被害者に謝罪してください。
2、いかなる裁判所においても、裁判官は、異性の体に接触することを職員に対して命じないでください。
3、いかなる裁判所においても、裁判所職員は、異性の体に接触するのをやめてください。


※2022年5月18日付の東京地方裁判所立川支部にあてた抗議・要請文を添付します。

kyuenmusasino.hatenablog.com

12/7、レイバーネットTV配信!「東京五輪が残した人権問題ーえっ! 爆竹だけで懲役1年」

レイバーネットTV・第177号放送

 東京五輪が残した人権問題ーえっ! 爆竹だけで懲役1年

 

【放 送 日】 2022年12月7日(水)19.30一20.40(70分)
【視聴サイト】 http://www.labornetjp.org/tv
        (YouTube配信サイト https://youtu.be/txIgw__ZHYw

司 会 : 根岸恵子
ゲスト:黒岩大助(当該)、山本志都 (弁護士)、井上森(救援会)

 オリンピックはまだ金をめぐる犯罪の火がくすぶり続けるなか、正当に抗議し反対するの者を不当に逮捕し弾圧してきました。これに目をつぶってはこれから先、私たちの意志表示や表現さえが難しくなってしまうのではないかと危惧しています。
 東京・武蔵野競技場で行われた無観客の五輪「聖火」セレモニー(2021年7月16日)に抗議して爆竹を鳴らした黒岩大助さんが「威力業務妨害」で逮捕されました。黒岩さんは爆竹を鳴らしただけで「139日」も拘留され、起訴内容も「聖火イベントへの抗議」がいつの間にかセレモニーの整理誘導にあたっていた「イベント会社員への業務妨害」に変えられました。
 9月5日、東京地裁立川支部刑事三部(竹下雄裁判長)は、この不当逮捕した弾圧(威力業務妨害罪)事件に対して懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡しました。なお裁判所は不当判決に抗議する黒岩さんをはじめ11人に対して退廷命令執行し、暴力的に排除しました。黒岩さん、弁護団は、不当判決を許さず、即時控訴し、決意新たに控訴審闘争の取り組み、支援・連帯を呼びかけています。

 ツイッターコメント歓迎。ハッシュタグは#labornettvです。

【問い合わせ】 labornetjp@nifty.com

レイバーネットTV https://youtu.be/txIgw__ZHYw

12/7(水)、「裁判所は、セクハラ退廷をやめろ!」申し入れ

 東京地方裁判所立川支部竹下雄裁判長による3度のセクハラ退廷について、抗議・申し入れをします。ぜひ、ご参加ください。

 

12/7(水)

12:30 東京地裁前集合 → 東京地裁に申し入れ

15:00 最高裁判所前  → 最高裁に申し入れ

裁判長、女と男、同じ重さにしてよ!



 武蔵野五輪弾圧裁判は、東京地方裁判所立川支部で行われました。

 全8回の公判中、竹下雄裁判長によって何回か退廷が命じられました。このうち3回は、女性に対する退廷でした。1回目の4月20日、男性の法廷警備員4人が女性傍聴者の両手足を担いで法廷から追い出しました。退廷になった女性は男性警備員が体を触れるのはやめるよう竹下裁判長に訴えましたが、竹下裁判長に無視しました。5月18日、東京地裁立川支部に抗議と改善を申し入れましたが、立川支部も無視しました。

女性は、異性に体を触られる恐怖を感じることなく裁判にかかわれないのか? セクハラ退廷に抗議・要請を申し入れ - 武蔵野五輪弾圧救援会

 2回目と3回目の女性傍聴者に対する竹下裁判長による退廷命令は、9月5日。4月20日のセクハラ退廷に抗議をしていたにもかかわらず、竹下裁判長は再び三度セクハラ退廷を法廷警備員に命じました。裁判所によるセクハラ命令、許せません!

1審判決…国家イベントを擁護するため、事実を捻じ曲げ表現の自由を制限する司法

武蔵野五輪弾圧裁判・一審不当判決
 (東京地裁立川支部刑事3部 2022年9月5日言い渡し)

2022年9月5日宣告  判決

(名前等)略

上記の者に対する威力業務妨害被告事件について、当裁判所は、検察官村田邦行並びに私選弁護人吉田哲也(主任)、同栗山れい子、同石井光太及び同山本志都各出席の上審理し、次のとおり判決する。

【主文】
被告人を懲役1年に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。

【理由】
(罪となるべき事実) 
 被告人は、東京オリンピックパラリンピックやそれに関連する聖火イベントの開催等に抗議の意思を示そうと考え、2021年7月16日午後5時13分頃、武蔵野陸上競技場で開催されていた東京2020オリンピック聖火リレー点火セレモニーの参加者等の入退場、受付け等が行われていた前記競技場に隣接する東京都武蔵野市吉祥寺北町5丁目11番所在の武蔵野総合体育館の西側歩道上において、ライターで点火した爆竹を同体育館敷地内に投げ入れて爆発させた上、同所に設置されたバリケードに近づくと、警備関係者らの制止を振り切り、同バリケードを乗り越えて同敷地内に侵入しようとし、その頃、同セレモニー参加者等の誘導、案内等の業務に従事していた株式会社スパイダー社員Uらに同業務の中断を余儀なくさせ、もって威力を用いて同人らの業務を妨害した。

(証拠の標目)略

(争点に対する判断)
1 争点
 本件において、被告人が、ライターで点火した爆竹を武蔵野総合体育館敷地内に投げ入れて爆発させ、バリケードを乗り越えて同敷地内に立ち入ろうとしたこと(以下、併せて「本件行為」という。)は、関係証拠により容易に認められ、被告人及び弁護人も争っていない。
 しかしながら、弁護人は、①威力業務妨害罪における「威力」とは、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力に当たる場合でなくてはならないのに、本件行為はこれに該当しない上、本件行為の内容からすれば、業務妨害の抽象的危険を有するものではなく、実際に業務が妨害された事実もないから、本件行為は威力業務妨害罪の構成要件に該当しない(争点①)、また、②本件行為の目的や内容、表現行為としての性質からすれば、仮に業務妨害罪の構成要件に該当するとしても、正当行為、(あるいは適用上違憲) として法律上保護の対象とすべきであるから違法性が阻却されるし、その法益侵害の程度からすれば可罰的違法性もない(争点②)、などとして、被告人は無罪である旨主張するので、以下検討する。

2 認定事実
(1) 関係証拠によれば、次の事実が認められる。
㋐2021年7月16日(以下、特に記載のない限り日付は同日を指す)、武蔵野陸上競技場において、東京2020オリンピック聖火リレー点火セレモニー(以下「本件イベント」という。)が開催された。
陸上競技場の西側には武蔵野総合体育館が隣接し、体育館敷地の西端は植栽等で公道である歩道と仕切られているほか、歩道と接している部分があり、そこにはバリケードとしてプラスチック製の柵が並べられ、本件イベントの参加者等が会場に出入りするための入退場口(以下「本件入退場口」という)が設けられていた。本件イベントの際、本件入退場口を通過できるのは、原則として本件イベントの参加者やスタッフ等の関係者に限られ、それ以外の者の体育館敷地内への立入りは規制されていた。
㋒株式会社スパイダー(以下「被害会社」という。)は、本件イベントの参加者等の受付、誘導及び案内等の業務(以下「本件業務」という。)の委託を受け、同社の従業員で本件業務を統括していたUは、本件イベント開催中、他の多数のスタッフと共に本件業務に従事していた。
㋓本件イベントの終了予定時間近くとなった午後5時過ぎ頃、Uは、本件イベントの参加者等の退場を誘導等するため、本件入退場口付近に向かった。午後5時13分頃、Uが本件入退場口付近の歩道上にいると、被告人が、歩いて歩道を横切り、本件入退場口付近で立ち止まった。Uが被告人に近づいてその左斜め前方に回り込み、その様子をうかがうと、被告人が手に爆竹のようなものを持っているように見えたことから、Uは、被告人に手に持っているものは何か尋ねたが、被告人から返答はなかった。Uは、警察官に被告人への対応を任せようとして、体育館敷地内にいた警察官を呼び寄せ、再び被告人の方に振り返ったところ、1発目の爆竹が鳴ったのが聞こえた。 
そのころ、被告人は、左手に持った爆竹にライターで点火し、体育館敷地に更に近づきながら、爆竹をUとは別のスタッフらが立っていた体育館敷地内に投げ入れた。爆竹は、被告人が手に持った状態で数回、被告人が投げた後空中や体育館敷地内で数回爆発し、爆発音を発した。爆竹を投げた直後、被告人は、爆竹の爆発音が鳴り響く中でプラスチック製の柵に駆け寄って手をかけ、柵から身を乗り出して乗り越えようとした。
㋔Uは、目の前で爆竹が爆発したことに驚き、わずかに身をすくませたが、すぐに柵を乗り越えようとする被告人に後ろから抱きつき、集まってきた警察官らと共に被告人の体育館敷地内への立入りを阻止した。Uは、本件イベントの会場から退場しようとする参加者等を引き留めておくようスタッフらに指示した上、参加者等を退場させる方法を検討するなどした。その結果、退場しようとする参加者を20分くらいの間、やむを得ず待機させた。

(2) 前記㋐ないし㋔の各事実について、Uは、公判廷において、各事実に沿う内容の供述をしているところ、同人の供述は本件入退場口付近の様子を撮影したカメラ映像等の客観的な証拠に符合していて、内容に不自然な点はなく、信用性は高い。
 弁護人もU証言の基本的な信用性は争わないものの、Uが、退場しようとする参加者を20分くらい待たせたのではないかと思うなどと述べる点については、その証言中、Uが、退場者を「一瞬」止めていた旨の表現をしていることや、前記カメラ映像からは本件行為後20分以内に退場が完了しているように見て取れることなどから、具体的な根拠に欠ける旨主張する。しかしながら、Uはくその証言中、「中には、いつまで待たせるのっていうような、ちょっと若干のクレームは発生しました」とも述べており、それが文字通り「一瞬」でなかったことは他の証言部分からも明らかであるし、Uによれば、退場者の中にはスタッフの指示に従わずに退場した者がいたが、スタッフとしては20分くらいの間参加者等に待機を促していたというのであって、実際に本件行為から退場がおおむね終了するまで20分程度要していることからすれば、Uが感じたという20分くらいという時間には一応の根拠があるといえ、この点の弁護人の主張には理由がない。

(3) なお、検察官は被告人が本件イベントの開催自体を妨害しようと考えて本件行為に及んだ旨主張しているが、被告人が本件行為に及んだ時刻が本件イベントの終了間際であったことや、被告人が本件イベントそのものを妨害するつもりはなく、オリンピック等の開催に抗議の意思を示そうとしていた旨供述していることからすると、被告人が本件イベントの開催自体を妨害する目的であったと認定するにはなお合理的疑いが残ることから、
 判示のとおり、東京オリンピックパラリンピックやそれに関連する聖火イベントの開催に抗議の意思を示そうと考えたものと認定した。

3  争点①(威力業務妨害罪の構成要件該当性)に対する判断
 (1) 前記の認定事実によれば、本件行為は、Uらをして、本来行う予定であった退場しようとするイベント参加者等の誘導等の活動を中断させ、異常かつ緊急の事態への対応を余儀なくさせるものであって、その具体的な態様、爆竹が爆発した位置、生じた爆発音の大きさ及び回数、爆竹投てき前後の被告人の行動並びに周辺の状況等からすれば、人の意思を制圧するに足る勢力であると評価することができ、刑法234条にいう「威力」に該当する。
 弁護人は、本件現場が喧騒のある市街地であって、静謐が求められる状況ではなく、本件当時、本件現場近くではオリンピックの開催に反対する抗議行動が行われていて警察官による警備も行われていたことなどからすれば、被告人が、単独で爆竹一束程度を人のいない体育館敷地内に投げ入れた行為をもって「威力」に当たるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、弁護人が指摘するような周囲の環境や警備の状況であったとしても、突然近くで爆竹が爆発したり、敷地内に投げ入れられたりすれば、イベント参加者等の誘導や案内等に当たるUらが、更に激しい爆発が起こったり、複数人による同様の行為が行われたりするのではないかと考え、驚いたり、恐怖を感じたりすることは当然のことである。そして、Uらをして、そのような危険を感じさせ、更にこれを未然に防止する対応を取らざるを得ない状況を生じさせる程度のものである以上、本件行為は、被害者の自由意思を制圧する行為に該当するというべきであり、そのことは本件現場周辺で警察官による警備が行われていたとしても変わらない。
この点に関する弁護人の主張には理由がない。

(2) そして、前記の認定事実中、被告人が爆竹を投げた方向や被告人とUの位置関係、爆竹を投げた後の被告人の進行方向や行為の内容等からすれば、本件行為は、爆竹がUらの至近で爆発して火傷をしたり、柵を乗り越えようとする被告人とUらが接触して転倒したりする危険を内包するものであり、本来Uらが行うべき誘導や案内等の被害会社の業務が円滑に行われなくなる蓋然性が相当程度認められる行為であるから、被害会社の業務を妨害する抽象的な危険を有する行為であるといえる。しかも、Uは、実際に柵を乗り越えて体育館敷地内に立ち入ろうとする被告人に後ろから抱きついてそれを阻止したほか、退場しようとする参加者等に待機を促すようスタッフに指示し、参加者等を退出させる方法等の再検討を余儀なくされ、本件行為により、予定していた業務の中断ないし変更を強いられたものであり、具体的な業務妨害の結果も生じていたことが認められる。
 弁護人は、本件行為が短時間の出来事であり、被告人が関係者らにすぐに身体を取り押さえられているから被害会社の業務が妨害される余地がなく、抽象的な危険がないとし、本件行為が本件イベントの終了時刻頃に行われ、結果的に予定された時間に終了していて、そもそもUらの業務には本件のようにオリンピックの開催に抗議する人々への警戒や対応も含まれていることから、業務の妨害には当たらないと主張する。
 しかしながら、弁護人の主張は、仮に被告人が本件現場で取り押さえられなかった場合には、柵を乗り越えて体育館敷地内に侵入し、所持していた残りの爆竹をすべて爆発させるなどの行動に出た可能性が高いという事情や、本件行為によりUらの中心的な業務であるイベント参加者らの誘導、案内業務が現に妨害されたとの事情を軽視し、本件行為の結果や危険性を過小に評価するものであって、およそ採用できない。

(3)さらに、本件行為の目的や具体的な態様等からすれば、自分の行為によって本件イベントの退場者らの行動に影響を及ぼし、被害会社による案内や誘導の業務が滞るおそれのあることを被告人が認識、認容していたことは明らかであって、威力業務妨害罪の故意に欠けるところもない。

(4) したがって、本件行為は、威力業務妨害罪の構成要件に該当する。

4 争点②(違法性阻却事由等の有無)に対する判断
(1) 弁護人は、被告人のこれまでの活動を前提とすれば、本件行為は、2020年東京オリンピックパラリンピックの開催に反対するという被告人の意思表示の現れであって、その手段や内容等からして象徴的言論として憲法により保障される表現行為に当たり、法律上保護されるべきであるから、正当行為として違法性が阻却され(又は業務妨害罪を適用することが違憲の問題を生じる) 、あるいは、本件行為の結果及び手段の軽微性、目的の正当性並びに手段の相当性及び必要性などからすれば、本件行為には可罰的違法性がないから、違法性が認められない旨主張する。
(2) この点、被告人が本件行為に及んだ目的、場所や時間からすると、本件行為が、東京オリンピックパラリンピックやそれに関連する聖火イベントの開催に抗議するという被告人の思想、考えを示すための表現行為であることは理解できるうえ、これを制限することが、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならない表現の自由に対する制約に当たるとする弁護人の主張には一応の理由がある。
しかしながら、本件において、Uらは本件イベントの参加者等の案内や誘導等を内容とする業務に従事しており、これが円滑に進行されることによって得られる利益は、Uらのみならず本件イベントの参加者等の関係者にとっても重要なものであって、本件業務もまた法律上保護されるべきものといえる。そして、憲法21条1項は、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであり、たとえ思想を外部に発表するための手段であるとしても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきであって、すでに認定したとおり、本件行為が、Uらをして被告人が生ぜしめた事態への対応を余儀なくさせ、本来予定していた被害会社の業務を直接又は間接に中断ないし変更させるものであり、かつ、Uらに相応の怪我を負わせる危険性を包含するものであることからすれば、その手段や方法は、表現行為としての相当性を欠いている。また、本件行為によって、本件業務の遂行が侵害された程度は小さいとはいえない一方、被告人が、自己の意見や抗議を表現する手段は、他の方法によって行うことも十分に可能であり、現に他の抗議活動は適法に行われていることも併せると、本件行為を制限することによる表現の自由の制約の程度が大きいとはいえない。
 そうすると被告人が本件行為により表現しようとした思想が政治的な意見であることを十分に踏まえても、本件行為の制限は、表現の自由に対する必要かつ合理的な制限として憲法上是認されるものであって、本件行為の違法性は阻却されない。
  本件行為について、正当行為として違法性が阻却され、あるいは業務妨害罪を適用することが違憲の問題を生じる旨の弁護人の主張には理由がない。

(3) また、本件行為に対するこれまでの認定や評価を踏まえれば、本件行為の手段や結果が、業務妨害罪の保護法益を侵害したと認められない程度に軽微であるとはおよそいえないし、そのことは本件行為の目的や表現の自由として保護されるという性質を総合的に考慮したとしても変わらないから、本件行為には可罰的違法性がないという弁護人の主張にも理由がない。

5 結論
 以上のとおり、被告人による本件行為について威力業務妨害罪が成立することは証拠から優に認めることができる。

(法令の適用)略

(量刑の理由)
 本件は、被告人が、オリンピック等に関連するイベント会場であり、関係者以外の立入りが規制されていた体育館敷地内へ火をつけた爆竹を投げ入れ、体育館敷地内と公道の境界に設置された柵を乗り越えようとして、本件イベントの受付や誘導等の業務に当たっていた被害会社従業員らの業務を妨害したという威力業務妨害の事案である。
 その犯行態様は、前記のとおり、被害会社の従業員を驚愕させ、予定していた業務を中断させて被告人を取り押さえるなどの対応を余儀なくさせるものであり、ともすれば周辺の者を負傷させかねない危険なものでもある。本件犯行により、被害会社従業員は、警察官らと共に被告人を取り押さえたり、退場しようとしていたイベント参加者に20分くらいの間待機するよう促し、その退場方法を検討したりするなど、実際の業務にも少なからず支障が生じることになったのであり、被告人が直ちに取り押さえられたため、業務が実際に中断した時間が必ずしも長時間ではなかったことを踏まえても、結果を軽視することはできない。
 また、被告人がこのような犯行に及んだ動機は、東京オリンピックパラリンピックの開催や聖火リレーの実施等に抗議の意思を示すというものであるが、どのような主張であれ、表現行為は他の法益との権衡の下、合法的になされなければならないことは当然のことであって、他者への影響等を顧みずに本件行為を選択した点において、相応の非難を受けなければならない。
 そうすると、被告人の刑責を軽視することはできず、その内容からして本件は懲役刑をもって償うのが相当な事案であるが、被告人が基本的な事実関係について認めていること、前科がないことなどを考慮し、その刑の執行については猶予するのが相当と判断した。(求刑懲役1年) 

2022年9月5日
東京地方裁判所立川支部刑事第3部
裁判長裁判官 竹下雄
裁判官    朝倉静香
裁判官    田中稔

黒岩さんに懲役1年の超不当判決…控訴審闘争にむけた100万円カンパにご協力を_(._.)_

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黒岩さんに懲役1年の超不当判決

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