武蔵野五輪弾圧救援会

2021年7月16日に東京都武蔵野市で行なわれた五輪組織委員会主催の「聖火」セレモニーに抗議した黒岩さんが、『威力業務妨害』で不当逮捕・起訴され、139日も勾留された。2022年9月5日の東京地裁立川支部(裁判長・竹下雄)判決は、懲役1年、執行猶予3年、未決算入50日の重い判決を出した。即日控訴、私たちは無罪判決をめざして活動している。カンパ送先⇒郵便振替00150-8-66752(口座名:三多摩労働者法律センター)、 通信欄に「7・16救援カンパ」と明記

立川拘置所は、聴覚障害者から補聴器を取り上げるな!法務省は「障害者の権利条約」をしっかり読め!

→ 10月20日、私たちは、立川拘置所が障害者差別をやめるよう、以下の抗議・要望・質問書を手渡した。

  対応した立川拘置所庶務課・堀内氏に、文書での回答を求めたが、公的機関でなければ回答しない、と答えた。

  また、補聴器の電池を渡さなかったことについて、「領置している物が願銭を出してから三日後に本人の手元に届くのは一般的に遅いわけではない。故意に差別したわけではないことを理解してほしい」と答えた。

  本人が要求しているにもかかわらず、聴覚障害者が健常者と同程度かそれ以下の聴力を得るために必要な道具を渡さない。身体障害を補う道具を使わせず社会的に聴力を奪ってしまった、合理的配慮をしないのは差別にあたる、という認識がまったくない。要望書を渡しても、このような回答しかできない法務省入国管理局もそうだが、法務省の差別体質は深刻だ。差別の見本を示してどうする?、法務省

  私たちは、法務省が拘置されているすべての障害者に合理的配慮をすることを求める。法務省は障害者の権利条約を学び、職員を研修し、障害者差別をただちにやめよ。抗議を受け止めて答える力をつけよ。

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                       2021年10月20日

立川拘置所長殿

 

        7・16武蔵野「聖火」セレモニー抗議弾圧救援会

             Eメール noolympicgames@gmail.com

 

  障害者を差別する立川拘置所に抗議し要望・質問します

 

 私たちは、2021年9月22日から立川拘置所に収監されている黒岩さんを支える「7・16武蔵野「聖火」セレモニー抗議弾圧救援会」である。私たちは、法務省拘置所による障害者差別・人権侵害に抗議し、要望・質問する。

9月29日(水)、弁護人が黒岩さんの接見に行ったが、黒岩さんが補聴器を使えなかったため通常の会話ができなかった。

 黒岩さんは、補聴器がないと日常生活・会話に支障をきたす。黒岩さんは、立川拘置所に移監された9月22日(水)、自身が使っている補聴器を房内に入れたが、補聴器に使う電池を入れることは拘置所に拒否された。9月26日(日)に電池が切れたことに気づき、翌9月27日(月)に電池を早急に渡すよう、立川拘置所に願箋を提出した。その際、看守に「9月28日(火)に渡す」と言われたが、9月29日の接見時にも電池は渡されないままだった。接見時、黒岩さんから「弁護士からも電池を渡すよう立川拘置所に訴えてほしい」と頼まれた弁護人が抗議・要望したが、その日も電池を渡さなかった。立川拘置所が全ての電池を渡したのは、電池を要求した9月22日から8日も経った9月30日(木)。電池がなければ補聴器は機能しないと知っていながら、立川拘置所は4日間も補聴器が使えない状態に放置した。

 福祉機器はできない行為を補助する、いわば体の一部のようなもの。歩けない人が移動のための道具を使えなければ、一人のときはじっと家にいるしかない。家の内外で活動するには大勢の人に抱えてもらうか、用事を誰かに頼むしかないだろう。しかし、車いす・義足・杖を使って移動できれば、歩けないという身体的障害をかなり補える。一人であるいは簡単な付き添いがいれば、健常者と同程度に生活できる可能性が広がる。車いす・義足・杖の管理者が、それがあれば移動が容易になると理解していながら渡さずに障害者を移動できない状態にしていたら、障害者虐待・差別をしている。人工肛門がある人にとってのストーマ視覚障害者にとっての白杖聴覚障害者にとっての補聴器、すべて同様の意味を持つ。

 黒岩さんは、補聴器をつけていても、非常に大きな声で話してもらわないと十分に聞き取れない。黒岩さんにとって補聴器は、特別な聴力・能力を得られる道具ではなく、健常者並みかそれ以下の聴力で日常生活を送るために必要不可欠な道具である。立川拘置所は黒岩さんの障害と補聴器の役割を知りながら、電池を渡すという簡単な行為を怠り、健常者ならば得られた「聞く」ことを4日間も奪い続けた。聴覚障害者から耳を奪う行為、と言っても過言ではない。立川拘置所は、移監時に下着や服を渡すのと同じように、勾留と同時に補聴器をいつでも完全に使える状態で渡すべきだった。

 拘置所は、電池を渡さないことによって、黒岩さんの生活を支障させたばかりでなく、弁護士との十分な意思疎通を奪い裁判を受ける権利を侵害した。

 日本政府が「障害者の権利に関する条約」を締結するために改正した障害者基本法には、「障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」とあり、差別禁止を規定している第4条で積極的に差別・侵害することだけではなく障害に配慮しない消極的な差別も禁じている。拘置所は、第4条にある合理的配慮を怠った。それにより、第29条にある、障害者が司法手続きを受けるために必要な意思疎通の手段を確保することにも背いた。

 さらに、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」第7条では、行政機関に対して差別を禁じ合理的配慮を求めている。法務省は2015年、障害者差別解消法9条に基づき「法務省における障害を理由とする差別の解消の促進に関する対応要領」を定めた。第5条で、障害の状態に応じて社会的障壁をとりさり合理的配慮をすること、監督者は職員に障害者差別を理解させるために研修などを行うよう求めている。本来であれば障害者の差別を率先してなくす努力・広報をすべき法務省が、自施設で障害者を差別して司法手続きを妨害することは絶対に許されない。

 障害者権利条約でも、「障害」を心身の特徴だけでとらえる医学モデルではなく、社会との関係の中でとらえる社会モデルを採用している。障害は、心身を補う道具を作り普及させ、偏見をなくすことによって変化するということだ。私たちは、電池を受け取ることで聴覚障害による困難を減らそうとした黒岩さんの訴えを真摯に受け止めず、聴力を社会的に奪った法務省拘置所に抗議する。以下、要望・質問する。要望・質問事項への回答を、文書かEメールで11月4日までに連絡先へ送ってください。

 

要望

1、法務省拘置所は、障害者が障害がない人と同程度に拘置所で生活・公判準備をできるよう、障害特性を見極めて合理的に配慮して施設を運営すること。

2、今回の対応は、社会モデルにおける処遇者としての在り方、合理的配慮とは何か、を法務省拘置所が十分に理解していないためと思われる。障害者を差別しないよう、障害者の特性・差別とは何か、とりわけ合理的配慮について法務省拘置所職員に研修すること。そのための体制を構築すること。

 

質問

1、黒岩さんに補聴器の電池を渡さなかった理由について明らかにしてください。

2、 障害者を差別しないために拘置所職員がどのような研修をしているのか、障害者虐待・苦情についてどのように対応しているのか、明らかにしてください。

【参考資料、抜粋】

障害者基本法

(目的)

第一条 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

第四条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。

3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

 

(司法手続における配慮等)

第二十九条

 国又は地方公共団体は、障害者が、刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となつた場合又は裁判所における民事事件、家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となつた場合において、障害者がその権利を円滑に行使できるようにするため、個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮するとともに、関係職員に対する研修その他必要な施策を講じなければならない。

 

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)

第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

 

(国等職員対応要領)

第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。

 

法務省における障害を理由とする差別の解消の促進に関する対応要領

(合理的配慮の提供)

第五条 職員は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮の提供をしなければならない。

2 職員は,前項の規定を実施するため,別紙に定める事項に留意しなければならない。

 

(監督者の責務)

第六条 官職の属する職制上の段階が内部部局における課長相当職以上である職員(以下「監督者」という。)は,前2条に規定する事項に関し,その監督する職員が適切に対応するために,次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。

一 日常の執務を通じた指導等により,障害を理由とする差別の解消に関し,その監督する職員の注意を喚起し,障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

二 障害者,その家族又はその他の関係者(以下「障害者等」という。)から不当な差別的取扱い,合理的配慮の不提供に対する相談,苦情の申出等があった場合は,迅速に状況を確認すること。

三 合理的配慮の必要性が確認された場合,その監督する職員に対して,合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 監督者は,障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には,迅速かつ適切に対処しなければならない。

 

 

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